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CDP2024の変更点は?統合質問書や中小企業向け質問書等を解説
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昨今の脱炭素化の世界的な潮流の中で、企業はできるだけ再生可能エネルギーを活用することが求められています。脱炭素化を推進しない企業は、投資家や消費者、国際的なイニシアチブなどからの評価を落とすことになり、脱炭素への取り組みが企業経営にとって喫緊の課題になっているとも言えます。
また、2021年以降、液化天然ガス(LNG)の需要増大や世界的な自然災害などで燃料価格が高騰し続け、企業や個人の電気料金負担増加につながっています。そのため、事業者の多くは「どうにかして固定費を削減したい…」、「節電しているけれど限界がある…」など、電気料金負担に関する悩みを抱えているのではないでしょうか。
そのような状況を背景に、現在注目を集めているのが「コーポレートPPAモデル(以下、PPAモデル)」です。
PPAモデルは企業が電気を調達する仕組みのひとつで、企業はPPA事業者と契約を結ぶことで、発電設備の設置費用を抑えながら再生可能エネルギー由来の電気を利用することができます。また、電気料金の安定化や低減につながる可能性もあります。
本記事では、PPAモデルの意味や特長、オンサイトPPAやオフサイトPPAの違いについてわかりやすく解説していきます。PPAの導入に興味がある企業の方は、ぜひ参考にしてください。
PPAモデル(Power Purchase Agreement)とは、発電事業者と電力ユーザーの間で取り交わされる契約モデルのことです。
※PPAモデルの契約では、発電事業者と電力ユーザーの契約を仲介する事業者が介在するケースもあります。そのような事業者や発電事業者を総称して、本記事では「PPA事業者」と記載しています。
PPAモデルは以下のような特徴があります。
※環境価値:再生可能エネルギーなどで電気をつくる際の「CO2を増加させない」という価値のこと。
詳しくはこちら>環境価値とは|企業が取り入れるメリットや調達方法、注意点をわかりやすく解説
なお、発電設備の設置場所や方法は、PPAモデルの種類によって変わります。詳細については次の項目で紹介します。
PPAモデルは発電設備をどこに設置するかによって、「オンサイトPPA」と「オフサイトPPA」の2種類に分けられます。
発電場所と電気の使用場所が離れている(オフサイトPPA)場合、一般送配電事業者が管理する送配電網を使って送電することとなるため、上記のような分類がされています。
以下、「オンサイトPPA」「オフサイトPPA」について詳細をご説明します。
オンサイトPPAは、電力ユーザーの敷地内にPPA事業者の発電設備や蓄電設備を設置し、電気の購入や利用に関する契約を結ぶサービスを指しています。
オンサイトPPAの主な特長は、発電設備の設置および保守点検の可能なスペースがあれば、別途土地の取得をせずに追加性のある再エネ電気を調達できるという点です。
屋根上などの空きスペースや駐車場などがある場合には検討しやすいサービスといえます。
オンサイトPPAで導入されている発電設備は、主に太陽光発電システムとなっています。太陽光発電は他の発電設備と比較して導入コストを抑えやすく、さまざまな場所に設置可能な発電システムです。
オフサイトPPAとは、電力ユーザーの所有している敷地外にPPA事業者が保有または新たに設置する発電設備から電気の購入や利用契約を交わすサービスのことです。
契約後、既存の送配電網を活用して自社のオフィスや工場・倉庫などへ送電し、電力を使用する流れです。
自社の敷地に発電設備を設置するためのスペースがない場合、自社外の発電設備から再エネ電気を調達することができます。また、オフサイトPPAはオンサイトPPAより設置場所に関する自由度が高いため、規模の大きい発電設備からの供給を受けやすいスキームです。
オフサイトPPAによって導入されている主な発電設備は、太陽光発電や風力発電システムなどさまざまです。
たとえば、スズキの生産子会社スズキ・モーター・グジャラートが、2022年5月からReNew PowerとオフサイトPPAモデルによる契約を交わしました。発電システムは太陽光・風力発電で、合計出力17.6MWという大規模な設備となっています。
参考:スズキ、インドでの再生可能エネルギー由来の電力使用を拡大|スズキ
オフサイトPPAは、環境価値と電力をセットで扱うかどうかで、「フィジカルPPA」と「バーチャルPPA」に分けられます。
環境価値と電力をセットで扱うPPAを「フィジカルPPA」と呼びます。
現状では、ただ単に「オフサイトPPA」という言葉を使うとき、フィジカルPPAを指すのが一般的です。
一方、再生可能エネルギーで発電した電力に含まれている「環境価値」のみ供給してもらう契約モデルを「バーチャルPPA」と呼びます。電力ユーザーは、現在契約している電力契約を継続しながら別の発電事業者から環境価値のみを購入することができます。
これまで説明してきた内容をまとめると、以下の図のようになります。
PPAモデルとよく似た仕組みとして「発電設備のリース」という方法もあります。混同しやすいので、ここで「PPAモデル」「リース」「自己所有」の主な違いを比べてみます。
オンサイトPPA | オフサイトPPA | リース | 自己所有 | |
---|---|---|---|---|
発電設備の所有者 | PPA事業者 | PPA事業者 | リース業者 | 電力ユーザー |
発電設備設置の初期費用の負担者 | ||||
発電設備の維持管理費用の負担者 | ||||
契約期間終了後の取り扱い | 撤去もしくは電力ユーザーへ無償譲渡 | PPA事業者が管理 (譲渡等はされない) |
撤去もしくは電力ユーザーへ無償譲渡 | 契約期間はなし 電力ユーザーの判断で売却や撤去可能 |
発電した電気の使用方法 | 電力ユーザー社内での活用のみ | 電力ユーザーの拠点で使用する分だけ活用可能 | 電力ユーザー社内での活用のほか、 売電が可能 | 電力ユーザー社内での活用のほか、 売電が可能 |
発電設備から調達した分の電気料金負担 | PPA事業者へ支払う | 小売電気事業者へ支払う | 使用した分の電気料金ではなく、リース料金として一定の費用をリース業者へ支払う | なし |
このようにPPAモデルは、リースや自己所有と比較して、電力の使用方法や料金の設定、契約期間終了後の取り扱いなどに違いがあります。
特に固定費や発電設備コストを抑えながら脱炭素経営を始めたい企業には、メリットを得やすいサービスです。
PPAモデルは、PPAサービスを提供しているPPA事業者と電力ユーザーの間で交わされる契約の1つです。新たな再エネ発電設備の創出に寄与する「追加性」のある手法と認められており、企業の脱炭素化や国際イニシアチブからの評価につながります。また、電力ユーザーは発電設備の初期費用や維持管理コストを抑えられるため、費用面でのメリットを受けられます。
自社の脱炭素化や電気料金の低減を目指す企業さまは、新たな手段のひとつとしてPPAサービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
エナリスでは、PPAサービスを提供しています。太陽光発電や蓄電池の初期費用を抑えたい方や脱炭素経営・BCP対策に乗り出している方はぜひご検討ください。
脱炭素についてもっと詳しく知りたい方はこちら
>脱炭素とは?脱炭素社会実現に向けての取り組みを交えて解説します!
エナリスの「PPAサービス」
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東京工業大学大学院 総合理工学研究科を修了後、約30年間、環境、再生可能エネルギー、ODAコンサルタント会社に勤務。在職中は自治体の環境施策、環境アセスメント、途上国援助業務の環境分野担当、風力や太陽光発電プロジェクトなど幅広い業務に従事。技術士環境部門(環境保全計画)、建設部門(建設環境)の資格を持つ。また、英語能力(TOEIC満点)を生かし、現在は英語講師としても活躍中。
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