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CDP2024の変更点は?統合質問書や中小企業向け質問書等を解説
近年、世界中で盛んになっている気候変動対策の一環として、CDPの質問書に回答する企業が多くなっています。CDPの質問書は毎年プライム上場企業を中心とした大企業に対して送付されていますが、2024年にはこの質問書の内容が一 […]
国際社会の目標として掲げられているCO2の排出削減。その実現のためには化石燃料に代わり、再生可能エネルギーのさらなる普及が不可欠です。しかし太陽光や風力などの再生可能エネルギーは天候などの影響を受けやすいという特性があり、安定した電力の供給源となることは難しいと考えられてきました。
こうした状況の改善に役立つのが「アグリゲーター」です。アグリゲーターとは、一般送配電事業者等からの指令を受け、様々なエネルギーリソースを取りまとめて制御する「司令塔」のような役割を担う存在です(Aggregateは「集める・束ねる」を意味する英単語)
アグリゲーターは、あちらこちらに分散する比較的小規模なエネルギーリソースを束ねてひとつの発電所のように集約して、電力の需給バランスを調整できるなど様々な価値を生み出します。アグリゲーターが行うこの新しいエネルギービジネスを、エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(英単語の頭文字をとって「ERAB」・イーラブ)といいます。
アグリゲーターには「発電側のアグリゲーション」と「需要側のアグリゲーション」を行うそれぞれの事業者がいます。このうち、「電力の需給バランスを調整するために、電力ユーザーが所有している発電設備や需要設備、蓄電池などを集約する」という「需要側のアグリゲーション」が、現時点においては、ERABの中心であるといわれています。
(ただし、近年では下記の記事で示すような「発電側のアグリゲーション」や、本記事では詳しく触れていませんが系統に直接接続する「系統用蓄電池」も登場しており、これらの重要度も今後のERABにおいて増していくと考えられています。)
アグリゲーターのもう一方の仕事である「発電側のアグリゲーション」については、こちらの記事をご参照ください。
>再エネ発電事業者を支援するアグリゲーターとは? メリットや専門企業の選び方などを解説!
本記事では、ERABで主要な役割を果たしてきた「需要側のアグリゲーション」、およびそのキープレーヤーである「リソースアグリゲーター」を中心に、ERABについて詳しくご説明します。
近年、個々の電力ユーザーが自社で比較的小規模な発電設備や蓄電池を所有するケースが増えてきました。このように各地に分散する小規模な電源や需要設備を分散型エネルギーリソース=DERといいます。ERABは、DERを集約しコントロールすることで、需要と供給のバランスを調整したり、再生可能エネルギーの出力抑制 ※ を回避したりといった電力システム上の価値を提供するエネルギービジネスを指します。
※再生可能エネルギーの出力抑制:電力システム全体で供給が需要を上回ると予測された場合に、太陽光や風力など変動性の再生可能エネルギーの発電設備の出力を電力システム側の指示で一時的に抑制すること。再生可能エネルギーの出力抑制は電力システムを安定的に運用するために必要な仕組みだが、できるだけ回避することが求められる。
このように説明すると一見難しそうですが、ERABで実施する作業を端的に表現すると以下の2つです。
ERABでは、主に2つのオペレーションを行います。
下げDR(デマンドレスポンス)では、電力ユーザーが電力需要(デマンド)を抑制するための制御します。
具体的には、夏場の昼間など、電力の供給が需要に追いつかないと予想されるとき、電力ユーザーが所有する需要設備の稼働抑制や蓄電池からの放電等を要請したりすることで効果的に需要の抑制(ピークカット)を行います。
※供給が足りない際は、上記で説明した需要抑制(下げDR)のほか、電力ユーザーの自家発電の電力を系統に供給する「逆潮流」が実施されるケースもあります。
上げDRとは、電力ユーザーが電力需要(デマンド)を増加する制御をすることを言います。
再生可能エネルギーの発電設備の導入拡大や電力需要の減少などに伴い、電力の供給が過多になったとき、電力ユーザーに対し需要設備の稼働や蓄電池への充電などを促すことで電力の需要増加を図ります。
※現在、ERABにおいて主として実行され報酬が出るのは、「需要の抑制(下げDR)」のみです。
電力システムにおいて、このサービスを提供するには、電力ユーザーの需給側に精通した司令塔としてアグリゲーターが必要です。ここからは、ERABで司令塔を担う「アグリゲーター」について説明します。
ERABにおいて電力システムの需給調整のためのサービスの司令塔となるアグリゲーターは、その役割によって「リソースアグリゲーター」と「アグリゲーションコーディネーター」に分けられます。
「リソースアグリゲーター」とはそれぞれの電力ユーザーと直接契約を結んで発電設備や需要設備などのDERの制御や管理を行う事業者です。「アグリゲーションコーディネーター」とはこれら複数のリソースアグリゲーターを取りまとめ、電力システムを運営する電力事業者(一般送配電事業者や小売電気事業者など)と電力の取引を行う事業者のことです。
これら2種類のアグリゲーターが連携して、電力ユーザーと電力事業者を繋いでいます。
上記の通り2種類のアグリゲーターが存在しますが、多くの企業(電力ユーザー)にとって重要なのが、電力ユーザーと直接契約を結び、発電設備や需要設備などのDERの制御を管理する「リソースアグリゲーター」です。
「リソースアグリゲーター」は電力の需給という専門性の高い分野に精通しつつ、個々の電力ユーザーの事情も鑑みてERABに参加するための様々な電力市場との橋渡しをしてくれる、心強い存在です。
電力ユーザーから見たときのリソースアグリゲーターの役割は、大きく分けて2つあります。
それぞれ、わかりやすく解説します。
複数の電力ユーザーが持っている電力需要設備や発電設備などのDERは、一つ一つの調整量は小さく、かつ変動します。しかし複数のリソースを束ねることで安定した電力供給が可能になり、仮想的な発電所(Virtual Power Plant=VPP)として機能します。
VPPについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
>VPP(バーチャルパワープラント)とは?仕組みや参加方法を解説
リソースアグリゲーターはDERMS(Distributed Energy Resources Management System=分散型エネルギーリソースの制御システム)などのエネルギー運用・管理システムを活用してDERを束ねます。
加えて、ERABに参加するために必要な「調整可能なリソースの活用の仕方」や「調整を行うための機能の検討・準備」などを電力ユーザーに提案することも、リソースアグリゲーターの役割です。
デマンドレスポンスとはVPPを実現するオペレーションのひとつで、電力会社からの要請によって電力需要(デマンド)を調整することです。
電力システムの電力供給が電力需要を上回っているときに蓄電池への充電や需要設備の稼働を促すことを「上げDR」、電力需要が電力供給を上回っているときに節電を促すことを「下げDR」といいます。デマンドレスポンス(DR)では、電力ユーザーに事前に指令や依頼を出すだけでなく、遠隔操作でDERを直接制御することもあります。
このデマンドレスポンスによって電力の需給バランスを調整するサービスが提供されると、調整電力量に応じた報酬がアグリゲーターを介して電力ユーザーに支払われる仕組みです。
デマンドレスポンスについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧になってください。
>デマンドレスポンスとは?参加するメリットや基礎知識、実施までの流れ、注意点をわかりやすく解説します
ここまでは、主にERABにおける「リソースアグリゲーターの役割」について説明してきました。では電力ユーザーがERABに参加するメリットとは何なのでしょうか?
メリットとしてはやはり「報酬を得られる」ことが挙げられます。前述の通り、電力システム側の要請に応じ電力需要を調整(デマンドレスポンス)することで、リソースアグリゲーターを介して報酬が支払われます。
またERABに参加し、再生可能エネルギーの普及促進や電力の安定供給に貢献することは、企業の社会的責任(CSR)が重視される現代社会で、企業信頼度の向上にもつながります。
エナリスはERABの実施に不可欠な「アグリゲーションコーディネーター」と「リソースアグリゲーター」双方の役割を兼ね備えております。VPPの構築に興味がある企業様も、DRへの参加に興味がある企業様もぜひお問い合わせください。
デマンドレスポンス(DR)への参加に興味がある企業の皆さまへ
自家発電設備や蓄電池をお持ちのお客さまは是非導入をご検討ください。
リソースアグリゲーターとしてERABに参入したい企業の皆さまへ
エネルギーリソースを運用・管理するシステムを提供します。
千葉県出身。東京工業大学においてエネルギー変換工学の研究で工学博士、製鉄会社研究員、ITコンサルタントなどを経て、持続可能なエネルギー社会の実現に向けて取り組む研究者・コンサルタントとして現在に至る。持続可能なエネルギー政策の指標化(エネルギー永続地帯)や自然エネルギー100%のシナリオの研究などに取り組みながら、国内外の自然エネルギーのデータ分析や政策提言を行う。
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