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CDP2024の変更点は?統合質問書や中小企業向け質問書等を解説
近年、世界中で盛んになっている気候変動対策の一環として、CDPの質問書に回答する企業が多くなっています。CDPの質問書は毎年プライム上場企業を中心とした大企業に対して送付されていますが、2024年にはこの質問書の内容が一 […]
近年、世界中で盛んになっている気候変動対策の一環として、CDPの質問書に回答する企業が多くなっています。CDPの質問書は毎年プライム上場企業を中心とした大企業に対して送付されていますが、2024年にはこの質問書の内容が一部変更になりました。大きな変更点の1つが中小企業も回答できるようになったことです。大手企業がCDPの取り組みに参加し、サプライチェーン企業に脱炭素化や排出量の情報開示を求める流れとなっている中、中小企業も情報開示に無関係ではいられなくなりつつあります。
今回は、中小企業向けの変更点を含む4つの主な変更点についてお伝えします。
これまでCDPや質問書について耳にしたことがある方などにとっても、より深く理解できる内容となっていますので、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
CDPは気候変動のみならず、フォレスト(森林)や水セキュリティ(水資源の保全)などに対する企業の情報公開を促進する非政府組織(NGO)です。CDPは2000年にイギリスでCarbon Disclosure Projectとして誕生し、日本での活動は2005年から始まっています。元々はCO2排出量の開示(Carbon Disclosure)を促す機関でしたが、気候変動問題が大きくなるとCO2だけではなくフォレストや水セキュリティに対しても情報開示が必要である、とのことから2013年には正式名称を単にCDPとしています。
CDPは気候変動対策、フォレストおよび水セキュリティに対する企業の取り組みを質問書の回答を通して集め、それぞれの企業に対してスコアをつけて公表しています。これにより、企業の取り組み姿勢が一目でわかるようになっています。
CDPの情報収集は企業に質問書を送付することから始まります。質問書はCDPが年に一回公表しており、企業はその質問書に対して回答します。CDPは企業から回答を受け取ると、回答内容からその企業の取り組みの評価を行い、結果をレポートとして公表します。質問書の回答はこれまで主に大手企業が行っていましたが、2024年から中小企業向けの質問書が作られました。
2023年のレポートでは、日本企業では花王株式会社と積水ハウス株式会社の2社が、「気候変動」、「フォレスト」、「水セキュリティ」の3分野すべてで最高評価となる「トリプルA」に選ばれています。CDPの評価が高いと、ESG投資が受けやすくなることや企業イメージが高くなるなどメリットがあるため、企業がCDPのスコアを重視する傾向は高まっています。
CDPの質問書は毎年改定されており、2024年版の質問書であるCDP2024も前年のCDP2023から変更が見られます。今回は、CDP2024の変更点について詳しく解説いたします。
以下の3つの記事では、「そもそもCDPとはどういったものなのか」から、2022年からのCDPの質問書の変更点や質問書の内容についてまで、詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
CDP2023からCDP2024への変更点は、大きく分けて以下の4点があります。
以降では、これらの内容を解説します。
CDP2023までは気候変動、フォレスト、水セキュリティの3つのカテゴリがありましたが、CDP2024ではこれらが1つにまとめられて統合質問書となっています。また統合質問書の中では、3つのカテゴリに加えてプラスチックと生物多様性を加えた5つのモジュールが作られており、必要に応じてそれぞれのモジュールごとに回答します。
今回の統合により、包括的な回答ができるようになるだけでなく、これまでそれぞれの質問書で重複していた内容が削除されたため、回答時間の短縮にもつながると考えられます。全ての企業は気候変動に関する質問に回答する必要がありますが、フォレストと水セキュリティに関してはCDPにより関連性があると判断された企業のみが対象となります。レポートに対するスコアは気候変動、フォレスト、水セキュリティそれぞれで行われますので、スコアに関しては従来通りになります。
生物多様性は2022年に、プラスチックは2023年に、それぞれ質問書に追加されましたが、CDP2024にていくつかの変更がありました。各変更点について、以下で解説します。
生物多様性に関する質問は、これまで気候変動の質問書に回答する企業のみを対象にしていました。しかし、生物多様性の問題は、気候変動をはじめとした多くの環境問題に関連しているとの認識から、CDP2024では中小企業と公的機関を除くすべての回答者に対して、生物多様性に関する基本的な項目を入力するよう対象を拡大しています。
プラスチックに関する質問は、これまで水セキュリティに関する開示を行う企業のみを対象にしていました。しかしプラスチックは水質だけではなくその他の環境問題にも広く関連しているため、CDP2024では、中小企業と公的機関を除くすべての回答者に対して、プラスチックに関する基本的な項目を入力するよう対象を拡大しています。さらに、プラスチックを取り扱うことで環境に大きな影響を与えるセクターには、より幅広い質問が提示されています。
また、プラスチックに関する活動の特定範囲にも変更があり、従来の「生産・商業化」から、「廃棄物や水の管理活動」「プラスチック関連活動向けの金融商品・サービスの提供」へと拡大されています。これにより、将来的にはプラスチック関連の指標がバリューチェーン全体に広がっていく可能性があります。
CDP2024から、既存のフレームワークや基準などとの整合性を取る動きが強まっています。フレームワークや基準は世界各国政府や機関が独自に作っている場合があるため、世界中で整合性を取ることが非常に困難です。センチやインチ、ポンドやグラム、摂氏や華氏などのように異なる単位があることと同じです。
CDP2024は、代表的な気候関連の開示フレームワークであるIFRS S2(国際財務報告基準の気候関連開示)やESRS(欧州サステナビリティ報告基準)、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォースの提言)、SEC(米国証券取引委員会の気候関連開示規則)、GHGプロトコルなどと整合性を持つように作られています。
CDP2023からCDP2024への大きな変更点の4つ目は、中小企業向けの質問が導入された点です。CDPの指定する中小企業とは従業員数が1,000人未満であり、年間の売上額が2億5,000万ドル未満の企業を指しており、SMEs(Small and Medium Enterprises)と表記されています。2024年からこの中小企業向けの質問書が導入されました。質問書は大企業のものよりも簡略化されており、質問事項も少なくなっています。
中小企業の多くが、大企業のサプライチェーンを支えています。このため、中小企業に対しても気候変動対策を始めとしてフォレストや水セキュリティ等、特に自社にかかわりの深い分野に対する理解を深め取り組みを促しています。
2024年の回答期限は2023年までと比べ約3ヵ月遅く設定されていました。
2025年のスケジュールはまだ公開されていませんが、2023年以前と同じスケジュールに戻る可能性もあります。
下記に2023年・2024年の大まかなスケジュールを記載しますので、参考にしてください。
項目 | 2023年 | 2024年 |
---|---|---|
質問書の公開 | 1月 | 5月 |
オンライン回答システムの公開 | 4月 | 6月 |
回答の提出締切 | 7月 | 10月※ |
2025年の回答を考えている企業の皆さまは、2023年以前と同じスケジュールで対応できるよう準備しておくことをお勧めします。
2024年からこれまで分かれていた気候変動、フォレスト、水セキュリティの質問書が統合され、1つにまとめられました。またこれらのモジュールに加えてプラスチックと生物多様性のモジュールが加えられた他、機構関連開示のフレームワーク強化と中小企業向けの質問書導入など、合計5つの変更点がありました。1つの質問書で全て回答できるので回答が少し簡単になりましたが、それでも質問の量は膨大になる可能性があるため、適切に回答する体制を社内で構築する必要があります。
CDPへの回答を検討されている企業の皆さまへ。
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1987年 トヨタ自動車株式会社。プラントエンジニアリング部 生産企画部 総合企画部長。第1トヨタ企画部長 戦略副社長会事務局長 他。国内外の資源、エネルギー、化学物質、環境管理、生産企画、経営企画、事業企画等事業戦略を担当。
2020年 愛知工業大学総合技術研究所 教授。産学連携、地域連携等を通じ、脱炭素社会、資源循環社会の達成に向けて研究開発、教育に従事。経済産業省総合資源エネルギー調査会 脱炭素燃料政策小委員会。カーボンマネジメント小委員会。内閣官房 国土強靱化推進会議 委員 他
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