デマンドレスポンスサービス
(容量市場のご案内)
電力需給バランスへの協力を通じ、社会貢献とお客さまの使用電力の抑制につなげます。
一からVPPに取り組む当社の思いをくみ取り、丁寧な説明でサポートしてもらいました。事業の推進に必要不可欠な「安心して相談できるパートナー」です
都市ガス大手として、九州北部を中心に総合エネルギー事業を展開する西部ガス株式会社。地球温暖化対策への社会的要請の高まりを受けて、同社では2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みとなる「西部ガスグループカーボンニュートラル2050」を策定しました。今回はその取り組みの一環となるVPP事業について、西部ガス株式会社 電力事業企画部 企画グループ 係長 吉安 健様にお話を伺いました。
当社は1930年創業の都市ガス会社です。元々は都市ガス専業でしたが、低圧電力の小売自由化を受けて2016年より小売電気事業に参入しました。現在は2050年カーボンニュートラルの実現に向け、新たな取り組みとしてVPP(バーチャルパワープラント)事業に参入するとともに、2025年度末の営業運転開始を目指して「ひびき発電所」の建設計画にも携わっています。
1930年に創業された西部ガスは、2021年に西部ガスホールディングスに商号変更し 、新たに設立した西部ガスが都市ガス事業を継承
当社では2050年カーボンニュートラルを目指し国が策定した「エネルギー基本計画」に基づき、西部ガスグループとして独自に取り組む「西部ガスグループカーボンニュートラル2050」を策定しました。これは、
という3つの柱を組み合わせることで、2050年までに「カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量の実質ゼロ)」の実現を目指す取り組みです。また移行期となる2030年に向けた具体的な数値目標を設けることで、お客さまと地域社会の持続的発展にも貢献していきます。
【2030年の目標数値】
その他の取り組みとしては、カーボンニュートラルに向けた産官学連携が挙げられます。
まず九州大学と組織対応型連携契約を締結し、メタネーション技術やCO2回収技術などの共同研究、その実現に寄与する有望技術の発掘などを行っています。
さらに福岡市、北九州市、宗像市などの自治体とも連携協定を締結して、温暖化対策を中心とするさまざまな取り組みを進めています。
当社がVPP事業への関心を強めたのは2019年ごろのことです。再生可能エネルギーの普及拡大に伴い、電力システムの中で調整力の重要性が高まり、需給調整市場(※1)創設へ向けた検討が進む中で、VPP、特に下げDR(※2)への取り組みは今後のために必要不可欠であると判断しました。
1 電力需給のバランス維持や周波数制御を行なう「調整力」を取引する市場
2電力不足の恐れがある場合に、系統からの電力消費を制限すること
それとは別に、お客さまからのご相談やお問い合わせもありました。VPPのサービスを提供してほしいという要望はもちろん、グループ展開をしているお客さまの中には「自社でVPPを検討しているけど、西部ガスさんはVPPをやっていないのか?」といった質問をされるところもあり、VPPへの関心の高さを実感しました。
従来の小売電気からVPPまでワンストップで提供することは、当社にとっても、お客さまにとっても大きなメリットとなります。このため当社では、下げDRを中心とする調整力ビジネス(ERAB)の第一歩として「電源I’調整力公募(※3)」に取り組んでいくことを決定しました。
当社にとってVPPはまったく未知の分野です。このためグループ企業やお客さまといった「リソース企業(※4)」に提案する内容はもちろん、社内の取り組み体制構築から運用上の課題解決まで、すべて一から作り上げる必要がありました。
4 ここでは、調整力の提供に用いる設備(自家用発電機や電力消費設備など)を「リソース」、リソースを保有する事業者のことを「リソース企業」と呼んでいます。
まず社内で取り組んだのは問題意識の共有です。「VPPがなぜ必要なのか」「そもそも何のためにやるのか」という問いを社内で共有し、その後、自社の事業としてVPPを「どこまで手を広げるか」「どの程度の深さで取り組むか」「その先に何を目指すのか」を検討しました。。
社外への影響については、正直なところ「やってみなければわからない」部分が多かったように思います。「取り組みの内容」や「期待できる結果」についてお客さまへどのように説明していくか、できる限りの準備をしていましたが、これに対してどのような反応が返ってくるのかは想像ができず、期待よりも不安が大きかったように思います。
当社では「一つ一つのリソース企業の思いや考えを尊重する」というスタンスでVPPに取り組んでいるのですが、そのために細かな協議事項や調整事項が数多く発生してしまうのも大変だった点の一つです。
リソース企業の確保も課題のひとつでした。当社としてはできるだけ多くのお客さまに参画していただきたいという考えでしたが、電源I’調整力公募への参加にはリソースの運転パターンや容量、加えて全体の需要規模など複数の条件があり、結果としてお客さまの意欲と実際の参画がリンクしないこともありました。仕方ないとはいえ、お客さまの期待や思いに応えることができなかったという意味で、大変もどかしい思いでした。
また、VPPビジネスの仲介役となる企業は、リソース企業と直接つながる「リソースアグリゲーター(※5)」と、リソースアグリゲーターを束ねる「アグリゲーションコーディネーター(※6)」がいます。両方を自社で担えるのがベストではありますが、当社のVPP事業はまだまだ全体の規模が小さく、単独での活用が困難です。このため上流工程を担うアグリゲーションコーディネーターとしてではなく、エナリスさんの協力をいただきながらリソースアグリゲーターとしてスタートすることにしました。
5 リソース企業とDRサービス契約を直接締結し、リソース制御を依頼する事業者。
6 リソースアグリゲーターに集まった電力をさらに束ねて、電気事業者と取引を行う事業者
まず大前提として、当社は自社のVPP事業を検討する以前から「令和2年度 需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業」をエナリスさんと一緒に取り組んでいたという事情があります。
もちろんエナリスさん以外の新電力さまのサービスも検討しましたし、当社にお声がけしてくれた事業者さまもありました。
ですが、エナリスさんには
というアドバンデージがあったため、思いを十分にくみ取ってくれる「信頼のできるパートナー」として選ばせていただきました。
2021年度はじめにエナリスさんからVPP、DR、電源Ⅰ’調整力公募への取り組みについてのご提案をいただき、サービスの利用を含む協業の可能性について検討に着手しました。検討作業と並行して、電源Ⅰ’調整力公募への参入を念頭にリソース企業の募集活動を進め、同年10月の公募へエナリスさんを通じて入札することになりました。実際にエナリスさんのサービスを利用して事業を開始したのは2022年度からとなります。
2022年は取り組みの初年度となりますので、定量的な効果の把握はこれからになります。まずはしっかりと問題点を洗い出し、この事業がお客さまにとってどういうメリットがあるか検証しているところです。
一方、数字に表れないところでは確かな効果を感じています。
VPPは電力システムを対象とするものですが、ガスコージェネレーションシステムなど、すでにお客さまが導入しているガス設備を利用して取り組んでいるケースも多いため、「初期費用を掛けることなく設備の有効・効率的な活用ができる取り組み」として評価していただいています。
また当社も、2021年の電源I’の入札プロセスにおいて、お客さまに書類を揃えていただいたりデータを調べてもらったりしたことで、お客さまのエネルギーに関する考え方・捉え方をこれまでより深く理解することが出来ました。当社としてこれまで接点の無かった情報にも触れることができ、エネルギー事業者としてこの先に繋がる部分があると感じています。
近年はカーボンニュートラルへの社会的関心が高まっており「具体的な取り組みを始めたいがどうしてよいか分からない」という悩みを感じているお客さまが増えています。
特にこの一年は全国的に電力需給が逼迫していたため、「当社として何かできることはないか?」という目線で検証を進めることで、社内はもちろんグループ会社やお客さまの関心も高まりました。VPPの取り組みについてお客さまからピンポイントでご相談いただくケースも増え、お客さまとの繋がりがより一層深まったと感じています。
VPP事業はこれまで接点のなかった人たちを巻き込んだり、様々な立場の利害調整をしたりと大変な場面も多いですが、既存のビジネスでは味わえない貴重な経験ができています。
VPP事業については現在取り組んでいる電源I’だけでなく、低圧リソースの活用も具体的に進めています。また将来的には、産業用蓄電池との連携など検討の可能性は拡がるものと考えています。今後も当社が持つさまざまなリソースとのシナジーを見込んでいます。
当社はこれまで、都市ガス事業、小売電気事業などを通して地域のお客さまとの信頼関係を構築してきました。これからもその信頼に応えるため、エナリスさんと協力しながら質の高いサービスをお届けしたいと考えています。
取材 2022年12月
※記載された社名・部署名等の情報は取材当時のもので、閲覧時点には変更されている可能性があることをご了承ください。
一からVPPに取り組む当社の思いをくみ取り、丁寧な説明でサポートしてもらいました。事業の推進に必要不可欠な「安心して相談できるパートナー」です
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