
- 脱炭素
脱炭素経営を推進するグリーンファイナンスとは
企業にとって脱炭素への取り組みが待ったなしの状況となっています。大手企業だけでなく、中小企業においても脱炭素経営が重要な位置づけとなるなか、国内でも活用が進むグリーンファイナンスについて概要や種類などを解説します。 グリ […]
企業が持続可能な成長をし、社会的な責任を果たすには、気候変動に対する取り組みが重要です。本記事では、省エネルギー、再生可能エネルギーの活用、燃料転換、気候変動リスクへの備えといった企業向けの気候変動対策を事例とともに紹介します。気候変動に対応し、未来の企業価値を高める第一歩を踏み出しましょう。
気候変動対策とは、CO2をはじめとした温室効果ガスの排出を抑える「緩和」と、気候変動の影響に備える「適応」の2つのアプローチを指します。これらの取り組みは、持続可能な社会を築くためだけでなく、企業が安定した経営を維持するためにも欠かせないものです。
近年、日本では気候変動がもたらす災害が頻発しています。たとえば、2018年の西日本豪雨や2019年の台風19号では多数の死者や行方不明者が出るなど、大きな被害がもたらされました。併せて経済面への影響も無視できません。東京大学の高村ゆかり教授の資料によると、2018年の西日本豪雨では約100億ドル(2025年3月のレートで約1.5兆円)、2019年の台風19号では約150億ドル(同じく約2.3兆円)の経済損失が発生しました。
企業が気候変動に対して適切な対策を講じることで、こうした経済面のリスクを軽減し、結果として社員の命や自社の財産を守ることに繋がります。さらには気候変動への取り組み自体が評価され、社会的信用が高まる時代になっています。
前述のとおり、企業が気候変動に対応するには、「緩和」と「適応」の両方に取り組むことが欠かせません。それぞれの役割は異なるものの、相互に補完し合うことで、より効果的に成果を得ることができます。
緩和は、CO2の排出削減をするための取り組みです。具体的には、省エネルギーの推進、再生可能エネルギーの利用、燃料転換などが挙げられます。これらの施策は、環境負荷を低減すると同時にコスト削減にもつながる可能性があります。
適応は、気候変動がもたらすリスクを管理し、事業への影響を最小限に抑えるための取り組みです。たとえば、自然災害に備えた事業継続計画(BCP)の策定や、サプライチェーンの強化が挙げられます。こうした対策を実施することで、災害時の損害を軽減し、取引先や顧客からの信頼を維持することが可能になります。
「緩和」と「適応」はどちらも必要不可欠です。緩和によって社会全体で温暖化の進行に歯止めをかけつつ、それでも生じ得る災害リスクには自社でしっかり準備をしておくことが、持続可能な事業運営につながります。
企業が気候変動対策を進める際、よく採用される施策としては、以下の4つがあります。
それぞれひとつずつ説明しましょう。
省エネ施策は、企業が最初に取り組みやすい「緩和」の気候変動対策の一つです。エネルギー効率の高い設備の導入や運用方法の見直しにより、CO2の排出削減とエネルギーコストの削減を同時に実現することができます。はじめの一歩としてエネルギーマネジメントシステムによる電気の見える化や自動制御に取り組む企業も多くあります。
企業の省エネ診断を実施している一般財団法人省エネルギーセンターが発行する「経営改善につながる省エネ事例集2023年度」では、具体的な省エネ診断事例が紹介されています。その中に記載の、企業のエネルギー使用状況の分析をする「省エネ診断」の事例、実際に省エネを実施した事例をご紹介します。これから省エネルギーに取り組む企業にとって有益な情報です。
愛媛県のJAえひめアイパックス株式会社が運営するスーパーマーケットで省エネ診断を実施したところ、省エネ運用と省エネ/再エネ機器の導入によって62トンのCO2排出量を削減できることがわかりました。年間約350万円のエネルギーコストの削減も見込めると予想しており、気候変動対策が事業の効率化にもつながることがわかります。
たとえば、以下のような施策は大規模な設備投資を必要とせず、比較的低コストで実施可能です。
九州旅客鉄道株式会社(JR九州)は、社員研修センターの建て替えに際しZEB化を推進しました。ZEBとは、建物の省エネ性能を最大化しつつ、その建物で再エネを創出するなどして、年間のエネルギー消費量を実質ゼロまたはマイナスにする建築物のことです。
その結果、エネルギー使用量を約58%削減し、環境負荷の低減とコスト削減を達成しています。
ZEB化のために、省エネ設備だけでなく、空調・電気・給湯・断熱などに関するさまざまな設備やシステムを導入しています。
これらの施策により、同センターは「ZEB Ready ※」の認証を取得し、2022年度の省エネ大賞(省エネルギーセンター会長賞)を受賞しています。
※ZEB Ready:ZEBを見据えた先進建築物として、外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備えた建築物。従来の建物に比べ、省エネで50%以下への削減が基準となる
再生可能エネルギーの活用は、脱炭素社会を目指すうえで欠かせない「緩和」の取り組みです。太陽光発電設備の導入や各種PPA(電力購入契約)モデルの活用により、環境負荷の削減と電力コストの削減を同時に実現することが可能です。経済産業省が発行する「再生可能エネルギー事業事例集」には、多くの成功事例が掲載されています。
新潟市中央市場では、施設の屋根に太陽光発電設備を設置し、再生可能エネルギーを活用する、「オンサイトPPA」という仕組みを導入しています。
オンサイトPPAとは、電力ユーザーの敷地内に発電事業者保有の発電設備を設置し、発電事業者との間で電力購入や利用に関する契約を結ぶ仕組みです。
詳しくは以下の記事をご参照ください。
>比べてわかる!オンサイトPPAとは?自己保有やオフサイトPPAとの比較
この取り組みにより、新潟中央市場は初期投資なしで再生可能エネルギーの導入を実現し、施設で使用する電力の一部を太陽光発電で賄うことが可能になりました。結果として、CO2の削減と電力コストの削減の両方を達成しています。
新潟市中央市場の事例は「再生可能エネルギーを導入したいが初期投資の大きさが課題…」と感じている企業に参考になる方法です。
詳細は下記の資料をご参照ください。
経済産業省「再生可能エネルギー事業支援ガイドブック(令和2年度版)」事例1:オンサイトPPAモデルによる自家消費型太陽光発電設備の導入
エナリスでもオンサイトPPAのサービスを提供しています。自社にオンサイトPPAが合うのか知りたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。
オンサイトPPAサービス【TPO PLUS】 | GX・脱炭素といえばエナリス
IKEAでは、店舗の空調システムに地中熱を活用することで、消費電力とCO2排出量を30%以上削減しました。この取り組みにより、IKEAは持続可能なエネルギー利用を実現するとともに、環境負荷を軽減しつつ経済的なメリットを得ています。
さらに、IKEAの取り組みは多くの報道やメディアで取り上げられました。
IKEAの事例は、自社の環境への取り組みをアピールしつつ店舗のエネルギー効率を高めたい企業にとって参考になるでしょう。
詳細は下記の資料をご覧ください。
経済産業省「再生可能エネルギー事業支援ガイドブック(令和2年度版)」事例20:地中熱利用設備を導入した大規模店舗の空調利用
「自社のエネルギーを一気に再生可能エネルギーに変えるのは難しい…」と感じる企業もいるでしょう。そこで、段階的な取り組みとして「燃料転換」があります。
燃料転換とは、使用している化石燃料をより環境負荷の少ないエネルギー源に切り替えることです。たとえば、これまで重油のみを使っていた企業が、一部設備のエネルギー源を天然ガスや電力に変えることでCO2排出量を削減できます。
燃料転換は、一定の設備投資が必要であるものの、CO2削減への着実な変化を実現できる方法です。特に電力への切り替えは、後々再生可能エネルギーを導入しやすくなることにもつながり、長期的な脱炭素化に向けた重要な一歩となります。
あるタクシー会社では、従来のLPG車を電気自動車(EV)に切り替える取り組みを進めました。これにより、CO2排出量が3分の1に減りました。さらにエネルギーコストも約60%削減しています。
この取り組みにより、タクシー会社は運用コストを削減しつつ、顧客や地域社会に対する環境配慮の姿勢を示すことができました。EV導入は、初期費用がかかるものの、長期的なコスト削減と環境負荷軽減を実現する有効な手段です。
詳細は環境省の事例資料をご覧ください。
環境省「タクシー会社におけるEV自動車の導入によるサービス・労働環境の向上」
ある医療・福祉施設では、都市ガスを主なエネルギー源とする冷温水発生機を利用していましたが、電力によるチラー(冷媒を使って対象を冷やす装置)への転換を実施しました。この取り組みにより、年間で96トンのCO2削減に成功しました。併せて、約321万円のエネルギーコスト削減にもつながっています。
医療・福祉施設の事例は、公共性の高い施設における持続可能なエネルギー利用の好例となります。
詳細は環境省の事例資料をご覧ください。
以上、緩和策の事例のご紹介でした。
ここでご紹介した施策のほか、CO2の吸収や貯蔵につながる取り組みも緩和策に含まれます。具体的には、植林やCCUS(CO2を回収し利用する技術)などが挙げられます。
気候変動が引き起こす自然災害や異常気象への対応は、企業の事業継続を確保するための重要な取り組みです。これまでの3つは「緩和」の取り組みになりますが、これは「適応」の取り組みになります。
企業の適応にはハード面とソフト面の取り組みがあります。よくある施策例を以下に挙げてみましょう。
上記は一般的な適応の施策例ですが、具体策は業種によって大きく異なります。国立環境研究所がおすすめの適応策を業種別にまとめています。イラストでわかりやすいので、是非参考にしてみてください。
インフォグラフィック(事業者編) | 事業者の適応 | 気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)
建設業では、気象災害による損害を減らすためにさまざまな施策を実施しています。具体的には以下の取り組みが挙げられます。
宿泊業・飲食サービス業では、自然災害や異常気象による生産リスクを低減するため、以下のような対策が取られています。
また、実際に企業が取り組んでいる適応策を業種別にまとめた結果が、環境省の「改訂版 民間企業の気候変動適応ガイド(2022年3月)」のp106(A-25)にまとまっています。こちらも併せてご参照ください。
気候変動への対応は、企業の持続可能な成長を実現するための重要な取り組みです。省エネ対策や再生可能エネルギーの活用、燃料転換、気候リスクへの備えといった具体的な施策は、環境負荷の軽減だけでなく、コスト削減や事業リスクの低減、さらには企業価値の向上にもつながります。
各業界の事例が示すように、大小さまざまな企業がそれぞれの規模や特性に合った対策を進めることで、持続可能な社会の実現に貢献しています。これから取り組みを検討する企業は、自社の状況に合った施策を選び、小さな一歩から始めることが重要です。特に、緩和策にあたる「省エネルギー」や「再エネの活用」は企業が取り組みやすい施策のひとつです。
省エネ・再エネ活用を検討中の企業さまはお気軽にエナリスにご相談ください
お客さまの状況を把握し、最適なエネルギー施策をご提案します。
下記よりサービスの概要をぜひご覧ください!
東京工業大学大学院 総合理工学研究科を修了後、約30年間、環境、再生可能エネルギー、ODAコンサルタント会社に勤務。在職中は自治体の環境施策、環境アセスメント、途上国援助業務の環境分野担当、風力や太陽光発電プロジェクトなど幅広い業務に従事。技術士環境部門(環境保全計画)、建設部門(建設環境)の資格を持つ。また、英語能力(TOEIC満点)を生かし、現在は英語講師としても活躍中。
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