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CDP2024の変更点は?統合質問書や中小企業向け質問書等を解説
近年、世界中で盛んになっている気候変動対策の一環として、CDPの質問書に回答する企業が多くなっています。CDPの質問書は毎年プライム上場企業を中心とした大企業に対して送付されていますが、2024年にはこの質問書の内容が一 […]
地球温暖化を代表とする気候変動が問題視されている現在、世界中でさまざまな対策が実施されています。
中でも、「再生可能エネルギー(再エネ)の普及」は温室効果ガス削減への有効的な手段として世界各国の企業・団体から大きな注目を浴びています。
「2050年カーボンニュートラル」を目指す日本でも、再生可能エネルギーの導入拡大を推進しています。
本記事では、再生可能エネルギーをより幅広く普及させるために2022年4月からスタートした「FIP制度」について、制度の概要からメリット・デメリット、既に導入されているFIT制度との違いなどをわかりやすく解説します。
東京工業大学大学院 総合理工学研究科を修了後、約30年間、環境、再生可能エネルギー、ODAコンサルタント会社に勤務。在職中は自治体の環境施策、環境アセスメント、途上国援助業務の環境分野担当、風力や太陽光発電プロジェクトなど幅広い業務に従事。技術士環境部門(環境保全計画)、建設部門(建設環境)の資格を持つ。また、英語能力(TOEIC満点)を生かし、現在は英語講師としても活躍中。
FIP制度はFIT制度の課題を改善する目的を兼ねているため、まずはFIT制度から理解するのが近道です。
FIT制度とは「Feed-in Tariff(フィードインタリフ)」の略称で、日本では2012年7月に開始された再生可能エネルギー固定価格買取制度のことです。
FIT制度は、再生可能エネルギーによる発電の長期的な収益を保証することで、多くの企業や一般家庭における再エネ発電設備の導入を促進することを目的としていました。
FIT制度の成果もあって再生可能エネルギーは確実に普及しましたが、一方で、FIT制度には大きく次の2つの課題もあります。
1つ目の課題は、電気を利用しているすべての国民が負担している「賦課金」の増大です。電力会社が再生可能エネルギーで発電した電気(以下、再エネ電気)を買い取るためのコストの一部は、国民の電気代に上乗せされる「再生可能エネルギー発電促進賦課金(以下、再エネ賦課金)」で賄っています。
再エネ賦課金は毎月の電気の使用量に応じて決まりますが、その単価は年々上昇しており、国民の負担は増大しています。
FIT制度は、発電した電気を固定価格で買い取ってもらえる仕組みや、発電インバランス(計画値と実績のズレ)発生時の費用負担を免除する特例により、再エネ発電事業への参入障壁を下げる効果がありました。
一方で、FIT制度のなかで再エネ発電事業者は発電量と売電量が最大になるよう行動しますが、 発電した電気が電力系統(電気を電力ユーザーに届けるための、発電・変電・送電・配電を統合したシステムのこと)や電力卸市場への影響を考慮していないため、 電力産業全体でのコスト低減や、再生可能エネルギーのさらなる導入拡大につながる取り組みが促進されにくい状況となっていました。
以上から、再エネ発電事業者自らによる再エネ発電事業の高度化を推進していくために、再エネ電力の取引を卸電力市場に統合するFIP制度が導入されました。
FIPは「Feed-in Premium(フィードインプレミアム)」の略で、「再エネ電気を、プレミアムと呼ばれる補助を上乗せした金額で電力会社に買い取ってもらえる」という制度です。
FIT制度のような固定価格ではなく市場価格に連動させることなどによって、再生可能エネルギー主力電源化へのステップになると期待されています。
FIP制度で再エネ電気を売る際に上乗せされるプレミアムの幅のことを「プレミアム単価」と言います。市場価格にプレミアム単価を上乗せした金額が発電者の収入になります。
では、プレミアム単価はどのように決まるのでしょうか。
プレミアム単価は以下の計算式で算出されます。
プレミアム単価 = 基準価格(FIP価格) ー 参照価格
単価を計算するために必要な2つの価格、「基準価格」「参照価格」について下記に整理しました。
電力会社が再エネ電気を買い取る際に適用する「1kWhあたりの単価」のこと。FIT制度における買取単価と同様、再エネ電気を供給するために必要とされる費用や適正な利潤などさまざまな事情を想定して定められます。
基準価格は、プレミアムが交付される期間である20年間を通して一定の金額です。
市場取引によって発電事業者が「期待できる収入分の金額」のこと。市場価格の平均価格をベースとして1ヶ月ごとに算出されます。
卸電力市場で取引される「電力の価格」と非化石価値取引市場で取引される「環境価値の価格」の合計から「発生するコストへの補助金額」を引いた金額が参照価格です。
非化石価値とは、石油や石炭などの化石燃料を使っていない「非化石電源」で発電された電気が持つ価値のことで、太陽光発電由来の電気も該当します。
FIP制度を活用する再エネ発電事業者は、「売電価格(市場価格または小売事業者への売電価格)+プレミアム」の合計額を収入として受け取ります。
参照価格が1ヶ月単位で変動するため、それに伴ってプレミアム単価も変動することとなります。
海外ではすでに導入されているFIP制度ですが、プレミアム価格の違いによって3種類存在します。それぞれの特徴について次のイメージ図とあわせて詳しく見ていきましょう。
市場価格に影響を受けない「固定金額」でプレミアム単価が決まっているのが固定型の特徴です。
プレミアム単価が変動せず、収入の計算がしやすく賦課金も一定なので国民への負担も軽減できるのがメリット。ただし、変動する卸電力価格に事業者の利益が大きく左右されやすいというデメリットもあります。
プレミアム単価と市場価格の合計金額に上限と下限を設定する方法です。
卸電力価格の変動による影響をある程度、緩和できるという点が大きなメリットといえます。例えば、合計金額が設定した下限値を下回った場合、差額を補填できるのです。
その反面、上限額を超えてしまった分のプレミアム単価は受け取れないので、適正な上限値・下限値の設定が重要となります。この設定の難しさはデメリットと言えるでしょう。
市場価格の変動に応じて、付与されるプレミアム単価も変動するのが「変動型」です。
市場価格とプレミアム単価の合計が常に一定になるように調整されているため、収益の安定化に期待でき、予測も立てやすいでしょう。
現在、導入されているFIT制度の固定価格買取とほぼ同じシステムなので、市場価格が低下した際、賦課金が増大するというデメリットが発生してしまいます。
日本のFIP制度は、プレミアム単価に上限・下限のキャップを設けており、「プレミアム固定型FIP(上限・下限つき)」に近い形です。プレミアムに上限があるかわりに、下限もあることで大きな損失を防ぐことができます。
特徴的なのは、市場価格の変動に合わせて1ヶ月単位でプレミアムが更新される点です。市場価格が安くなり収入が少なくなる月にはプレミアムが多くなり、逆に市場価格が高く収入が多い月はプレミアムが少なくなる仕組みとなります。
この仕組みによって、電力市場との連動と同時に発電事業者への投資インセンティブも確保できるというのが日本のFIP制度です。
FIT制度導入後、浮き彫りになった課題を解決するために導入されるのがFIP制度です。
大きな違いとして挙げられるのはプレミアムの追加ですが、それに伴ってどのような部分が改善されているのでしょうか。
より理解を深めるため、2つの制度を比較して考えてみましょう。
比較しやすいよう2つの制度の概要を表にまとめました。
FIT制度 | FIP制度 | |
---|---|---|
価格の決まり方 | 買取期間中は 固定価格での買取 | 市場価格に連動して 買取価格が変動 |
買取保証 | 保証されている | 保証されていない |
バランシング | 自社で行う必要はなし | 自社で行う必要あり |
電気の売り先 | 自分で探す必要なし (小売電気事業者/一般送配電事業者が買い取り) | 自分で探す必要あり |
やはり大きな違いは、売電価格が固定なのか変動するのかというポイント。
それに伴って、再エネ発電事業への取り組みの自由度が上がり、完全に政府主導の制度から事業者の意向が影響しやすい制度へ移行しています。
そのため、FIP制度において再エネ発電事業者は「バランシング」も行わなければなりません。
バランシングとは、「発電可能な再エネ電気の見込みの数値(計画値)」と「実際に発電した数値(実績値)」を一致させるための調整のことです。
計画値と実績値に差が生じた場合、その差を埋めるための費用(インバランス)を払う必要があり、FIT制度では免除されていた負担を発電事業者が負わなければなりません。
発電事業者への負担はコスト面だけでなく、需給管理や売電先の検討なども自社で行う必要があります。
このように、再エネ発電事業への自由度が上がる反面、バランシングにかかるコストやリソースを懸念している発電事業者も少なくありません。
コスト面の問題点を緩和するために、「バランシングコスト」を勘案した金額をプレミアム単価の一部として補助するという対策がとられますが、事業者にかかる負担が増加するという点は、FIP制度の課題となることが予想されます。
上記のような課題も存在しますが、FIP制度は再エネ発電事業自立化への中間地点として、より発展的な制度と言えるでしょう。
市場的な観点や国民への負担軽減など多くのメリットが見込まれているFIP制度。
しかし、実際に取り組みを行う事業者にはどのようなメリットが想定されるのでしょうか。
そこで、FIP制度に移行することによって、発電事業者が得られるメリットについて解説します。
FIP制度を活用することで、発電事業者が得られる第1のメリットとしては「収益の拡大」が挙げられます。
固定価格で必ず売電できるという安定感こそ失われますが、需要が多い=市場価格が高いときに売電することで、収益を拡大することが可能です。
そのためには、電力需要が高い時に売却する工夫(蓄電池の活用など)が必要になりますが、事業者の努力や工夫が収益に反映されやすくなるという点では、より健全な制度といえます。
FIP制度の課題として、FIT制度に比べると再エネ発電事業者が発電事業を開始するハードルが上がってしまうという点が挙げられます。
これまで期間こそ決まっているものの、固定価格で必ず売電できていたのが、FIP制度導入により需給管理や市場の動向調査、売電先の検討を自社で行わなければいけません。
そのような需給調整を自社で行うのが難しい企業も多いため、「アグリゲーションビジネス」の活性化が予想されます。
発電事業者側でのアグリゲーションビジネスとは、小規模の再生可能エネルギー電源(分散型電源)をまとめて需給管理を行い、市場取引を代行するサービスを指します。
例えばエナリスでは、再生可能エネルギーの不安定性と発電事業者の不安を解消する「再生可能エネルギーアグリゲーションサービス」の提供をしています。これは、発電予測や予測値に基づく発電計画の作成、計画値との誤差を解消するための発電事業者バランシンググループの組成、蓄電池を使った計画値との誤差補正などを行うものです。
FIP制度の導入により、このようなアグリゲーションビジネスが活性化することで、さまざまな企業にとって新たなビジネスチャンスに繋がるといったメリットも考えられるのです。
FIP制度のデメリットと考えられるのは、市場価格の変動に伴ってプレミアム単価も変動するため、投資回収の予想が立てにくいという点です。
市場価格は、時間帯や季節、長期的な気候変動などにより大きく変動してしまうため、価格変動幅を予測し、収益を予想するのは困難と言えるでしょう。
そのようなリスクを軽減し収益を確保するために、需給管理をしっかりと行ったりアグリゲーションビジネスを活用したりするなどの工夫が必要です。蓄電池の活用等の工夫によって価格変動に対応した売電を行う必要があります。
FIP制度は、再生可能エネルギーを将来的に主力エネルギーとして運用するための大きなステップです。
中でも、アグリゲーションビジネス等の再生可能エネルギー関連事業の活性化は、日本の脱炭素化に向けて大きな働きをすると期待されます。
エナリスでは、蓄電池等のさまざまな分散型エネルギーリソースを活用するアグリゲーションビジネスの拡大を促すことで、将来的な新しい電力システムの実現を目標としています。
例えば、エナリスが提供している「VPPプラットフォームサービス」は、小売電気事業者やリソースアグリゲーター(電力ユーザーと契約を結び、エネルギーリソース制御する事業者))向けに、制御システムをSaaSで提供しVPP事業の支援を行うサービスです。
エナリスではその他にも、再生可能エネルギーや電気に関するさまざまなサービスを提供していますので、まずは気軽にお問い合わせください。
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