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CDP2024の変更点は?統合質問書や中小企業向け質問書等を解説
近年、世界中で盛んになっている気候変動対策の一環として、CDPの質問書に回答する企業が多くなっています。CDPの質問書は毎年プライム上場企業を中心とした大企業に対して送付されていますが、2024年にはこの質問書の内容が一 […]
近年、地球温暖化の要因である温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「脱炭素」に向けた動きが世界で活発化しています。
2015年12月に国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で採択された「パリ協定」では、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすることと、21世紀後半には温室効果ガス排出量と吸収量のバランスをとることが、世界共通目標として掲げられました。このパリ協定を契機に脱炭素の潮流が世界で加速し、2021年4月には米国主催の気候サミット、2021年11月に英国主催の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)、2022年11月にはエジプトで同会議第27回(COP27)が開催されました。
日本では、2020年10月に、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」が宣言され、2021年4月の気候サミットでは、2030年度までに温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減するという新目標が表明されました。
その新目標を前提として、2021年10月には、エネルギー政策の基本的な方向性を示す「第6次エネルギー基本計画」が閣議決定され、再生可能エネルギーを主力電源として、最優先の原則の下で最大限導入するという方針が明記されました。また、2030年度の電源構成における再生可能エネルギー比率(2019年時点で18%)を、旧目標の22~24%から36~38%へ大幅に引き上げることも示されました。
今回は、主力電源化に向けて導入が加速している再生可能エネルギーについて解説していきます。
東京工業大学大学院 総合理工学研究科を修了後、約30年間、環境、再生可能エネルギー、ODAコンサルタント会社に勤務。在職中は自治体の環境施策、環境アセスメント、途上国援助業務の環境分野担当、風力や太陽光発電プロジェクトなど幅広い業務に従事。技術士環境部門(環境保全計画)、建設部門(建設環境)の資格を持つ。また、英語能力(TOEIC満点)を生かし、現在は英語講師としても活躍中。
再生可能エネルギーとは太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなど、自然界に存在し永続的に利用できるエネルギーです。石油・石炭・天然ガス等の化石燃料とは異なり、再生可能エネルギーは大気中の温室効果ガスを増加させないため、持続可能な脱炭素社会を実現するための主力電源として期待が高まっています。また、埋蔵量に限りのある化石燃料に対して、再生可能エネルギーは資源が枯渇するおそれがないため、そのような意味でも持続可能なエネルギーであると言うことができます。
さらに、再生可能エネルギーは大部分が国産であるため、エネルギー自給率の改善にも寄与します。現在の日本のエネルギー自給率はわずか約11.2%(2020年度)です。化石燃料の海外依存度は約84.8%(2020年度)にもなっており、その化石燃料の輸入費用は年間約20兆円にものぼります。
参考:経済産業省資源エネルギー庁「令和2年度(2020年度)におけるエネルギー需給実績(確報)」P.44
再生可能エネルギーには主に以下の種類があります。それぞれの種類ごとの特徴や課題を紹介します。
再生可能エネルギーの種類 | 特徴 | 課題 |
---|---|---|
太陽光発電 | 太陽の光エネルギーを電力に変換して発電する | 時間帯や天候によって発電量が変動する |
風力発電 | 風の力で風車を回転させて発電する | 風の強さによって発電量が変動する |
大規模水力発電 | ダムなどの大型施設で、大量の水が高い所から低い所に流れる力で発電する | 水量が豊富で落差が大きい山間部に建設する場合が多く、建設コストが高くなる |
中小水力発電 | 河川などの水が流れる力を利用して発電する | 未開発地点は奥地かつ小規模であることが多いため、調査・設置のコストが高くなる |
地熱発電 | 地下深くの高温の蒸気を利用して発電する | 綿密な地質調査と開発に膨大な費用がかかる |
バイオマス発電 | 木材・生ゴミ・家畜排泄物等の生物資源を燃焼またはガス化させて発電する | 燃料の調達コストがかかる |
再生可能エネルギーには様々なメリットがあり、導入を促進することで脱炭素化や経済の活性化などにつながります。ここでは代表的な5つのメリットをご紹介します。
石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料とは異なり、再生可能エネルギーは発電時に大気中の温室効果ガスを増加させません。また、発電設備の設置から燃料の輸送、廃棄等を含めた発電のサプライチェーン全体で比較した際にも、再生可能エネルギーによる発電は化石燃料による発電より温室効果ガスの排出が圧倒的に少ないことが示されています。
<発電のサプライチェーン全体におけるkWhあたりのCO2排出量>
出典元:電力中央研究所「日本における発電技術のライフサイクル CO2排出量総合評価」
発電にあたって大気中の温室効果ガスを増加させないという価値は、「環境価値」と呼ばれており、それ自体が取引の対象になるほど企業や社会にとって重要なものとされています。
環境価値について詳しくはこちら>環境価値とは|企業が取り入れるメリットや調達方法、注意点をわかりやすく解説
エネルギーの安全保障とは、安定的にエネルギーを供給しようとする取り組みを指します。再生可能エネルギーの資源は、その多くが太陽光や水力など自国に存在するエネルギー源であるため、他国の事情に左右されにくいと言われています。
現状では、日本の化石燃料依存度は「84.4%」です(2020年度時点。参考:経済産業省資源エネルギー庁「令和2年度(2020年度)におけるエネルギー需給実績(確報)」)。そしてその多くを他国からの輸入に頼っているため、エネルギー資源の確保が国際情勢に左右されやすく、安定供給が難しくなるリスクを負っています。
国内の再生可能エネルギー比率を高めることは、エネルギー資源の海外依存度を下げることにつながり、エネルギー安全保障上の大きなメリットとなります。
いつか枯渇する石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料とは異なり、再生可能エネルギーは長期的に繰り返し利用できます。たとえば、太陽光や風力、水力などのエネルギー源は自然界に常に存在しており枯渇の心配がありません。バイオマス発電では発電に必要な燃料の生産と消費のバランスを取ることで、枯渇させず持続的に活用できます。
従来の火力・原子力等の発電所は大規模集中型であるのに対し、再生可能エネルギーは、比較的小規模な多数の電源が需要地の近隣に点在する小規模分散型であると言えます。そのようなエネルギーリソースを「分散型電源」と呼びます。各地に分散型電源が設置されていれば、自然災害が発生して大規模発電所からの送電が寸断されても地域内の分散型電源を非常用電源として活用できるため、災害に対するレジリエンス(強靭性)を高めることができます。
再生可能エネルギー等の分散型電源によって、地域の特性や需要に合わせたエネルギーシステムを構築することができます。地域で発電した電力を同じ地域の企業や住民が利用する「地産地消」が行われることで、地域経済の循環・活性化につながります。さらに、発電設備の設置や維持管理のための雇用創出も期待することができます。
また、長距離の送電は送電ロス(変電所や電線の抵抗等によって電気の一部が失われること)の影響が大きくなりますが、地域での電力消費なら送電ロスを抑えられます。電気の地産地消は、エネルギーの効率利用につながり、コスト低減や環境負荷軽減にも寄与すると言えます。
上記で見て来たように大きなメリットを持つ再生可能エネルギーですが、日本や世界で導入を拡大していくためには克服すべき課題もあります。
再生可能エネルギーの発電量は気象条件等に左右されやすいという特性があります。
例えば太陽光発電の場合、雨の日は日射量が少ないため発電量が減少します。風力発電であれば、風向きや風の強さによって発電量が変動します。
電力を安定供給するには、需要と供給のバランスを常に保つ必要があります。そのため、変動性の高い再生可能エネルギーの導入拡大には、その変動に対応し需給バランスを調整する別の電源や蓄電池の活用が欠かせません。
一定の土地面積での発電効率を比較すると、再生可能エネルギーは火力や原子力など従来の発電方法より低くなりがちです。
100万kWの電気を出力する場合で考えてみます。原子力発電所で100万kWの出力の設備をつくる場合「約0.6k㎡」の土地が必要です。これは一般的な学校の教室で例えると、約10個分の広さとなります。
一方、太陽光発電で100万kWの出力の設備をつくる場合は、「約58k㎡」の土地に発電設備を設置しなければなりません。学校の教室約996個分の広さです。さらに風力発電では、太陽光発電の3.4倍である約214k㎡もの敷地が必要となります。こちらは約3,570個分の教室と同じ広さとなります。
参考:経済産業省資源エネルギー庁「原発のコストを考える」
日本の再生可能エネルギーの発電コストは、諸外国と比較して高い状況です。
例えば太陽光発電設備1kWごとのシステム費用を比較すると、日本は欧州のおよそ3倍のコストがかかっており、再生可能エネルギーの発電コスト増加の一因となっています。
<太陽光発電設備の費用比較>
出典元:一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)「太陽光発電コスト低減可能性調査 報告書」
現在、再生可能エネルギーの発電コストは減少傾向です。例えば、日本の事業用太陽光発電のコストは、2020年時点で「12.9円/kWh」。この数値は、「2030年に8.2~11.8円」と減少する見込みです。
参考:経済産業省資源エネルギー庁「電気をつくるには、どんなコストがかかる?」
しかし、海外ではすでに、風力発電や太陽光発電など再生可能エネルギーにかかるコストはさらに減少しています。世界最安値を実現したアラブ首長国連邦では、2016年時点で太陽光発電のコストが「2.42セント(約3円)/kWh」となりました。
参考:経済産業省資源エネルギー庁「再エネのコストを考える」
日本の再生可能エネルギー発電のコストが他国より高い傾向にあるのは、地震や台風などのやむを得ない地理的・気候的条件への対応が一因です。一方で、流通構造や取引慣行などが効率的でなく、コスト改善の余地は残っているとも指摘されています。日本の再生可能エネルギー発電コストが石炭火力よりも安くなるのは2025年以降と言われています。
このように再生可能エネルギーには、今後さらなる拡大を目指すうえでいくつかの課題があります。
一方で、国が推進したFIT制度やFIP制度 ※1 によって、課題3で示した発電コストを国全体で吸収する仕組みが整い、再生可能エネルギーの導入比率は大幅に伸びています。また、課題1で示した発電量の変動については、VPP(バーチャルパワープラント) ※2 ・DR(デマンドレスポンス) ※3 の取り組みが拡がっており、再生可能エネルギーの不安定さを社会全体で受け止める土台がつくられつつあります。
1. FIT制度:再生可能エネルギーによる電力を固定価格で買い取る制度
FIP制度:再生可能エネルギーによる電力の再エネ発電事業者が卸電力市場などで売電したとき、売電価格に補助額が上乗せされる制度
>FIT制度・FIP制度について詳しくはこちら
2 VPP(バーチャルパワープラント):小規模の電源設備をまとめて管理し、全体として発電所のような機能を得るシステム
>VPPについて詳しくはこちら
3. DR(デマンドレスポンス):電力不足が危惧されるときや供給量以上の電力量が必要になると予測されるときに、電力ユーザーが電力会社の要請に応じて系統から供給を受ける電力量(電力購入量)を調整する仕組み
>DRについて詳しくはこちら
ここまでお伝えしてきたように、再生可能エネルギーの導入拡大は国の大きなミッションとなっており、それは各企業の取り組みにも波及しています。
エナリスでは、企業の皆さまの再生可能エネルギー導入の取り組みをサポートするサービスをご提供しています。
これから再生可能エネルギー導入に取り組んでいく際には、ぜひ一度エナリスにご相談ください。
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